「牛に引かれて善光寺」は昔の話。
現代人なら
鉄道乗って善光寺
という訳で、しなの鉄道に乗って新潟から長野入りした翌日、江戸時代より「一生に一度は善光寺参り」や「遠くとも一度は詣れ善光寺」と言われてきた名刹善光寺に行きました。
善光寺へのアクセス
JR長野駅から善光寺行きバスで約15分。「善光寺大門」下車徒歩5分。
JR長野駅から善光寺本堂までは約2キロ。道も上り坂ではあるので、歩くとやや時間はかかります。が、基本「4キロ以内は徒歩圏内」の私は、宿泊していたホテルから20分ほど歩いて行きました。
善光寺表参道沿いにある歴史ある建物。
創業は江戸時代。加賀百万石の前田藩が定宿としていた「御本陣藤屋」から続く『THE FUJIYA GOHONJIN』
現在は、レストランや結婚式場として利用できます。カフェでも利用できたら・・・と思ったのですが、この日は結婚式のご予約があり一般客は入ることができませんでした。
善光寺の歴史
善光寺のご本尊・一光三尊阿弥陀如来(いっこうさんぞんあみだにょらい)は、欽明天皇の時代、552年に百済から日本に渡った日本最古の仏像の一つと伝わっています。
この仏像は、仏教が伝来されたのちに起こった、仏教保護派の蘇我氏&厩戸王(聖徳太子)vs仏教反対派の物部氏の争いの最中、物部氏によって難波の堀江に捨てられてしまいました。
しかし、その後信濃国司の供として都に上っていた本田善光(ほんだよしみつ)に拾われ、信濃の元善光寺(長野県飯田市)に祀られました。
642年に現在の地に遷され、644年に伽藍が創建。寺名の『善光寺』はこの本田善光の名から取ったと伝わっています。
なお、山川日本史の教科書によると、仏教伝来の年については、538年と552年の2説あり、現在では538年の方が有力のようです。
538(ご・さん・ぱい)年 仏教伝来
で覚えた方も多いのでは。でも、実際試験で年号ってあんまり出ない気がするんですよね。(出来事の時系列を把握するために必要な知識であるとは思うので、覚えておいて損はないと思いますが)
なお、このご本尊は絶対秘仏のため、拝観することはできません。その代わり、鎌倉時代に造られたご本尊の御身代わりの前立本尊が7年に一度ご開帳されます。
この御開帳、直近で行われたのは昨年、令和4年(2022年)の春。ということで、次回は2029年です。
・・・完全にアラフィフになってら
境内案内
仁王門
1918年に建立された善光寺の入口となる門。
正面には、高村光雲と米原雲海の合作による仁王像がいます。
網がかけられているので、ちょっと見にくいのが残念ですが、それでも迫力ある表情や筋骨隆々の肉体美は素晴らしい!
更にぐいっとアップで。
門の背面には、三宝荒神像と三面大黒天がいます。が、同様に網越しで写真だと全くうまく撮影できなかったので、画像は割愛。こちらの像も仁王像同様、高村光雲と米原雲海の合作です。
濡れ仏
山門の手前にある高さ約2.7mの延命地蔵菩薩坐像。日本全国を行脚する巡礼者の供養のため造立されたもの。
山門
仲見せ通りを過ぎ、次に目の前に現れるのが山門。
さすがの風格です。1750年の建立。高層建造物がない時代、これだけの立派な門を見るだけでも「一生に一度」善光寺に来る価値があったんではないでしょうか。
楼上の額に書かれた【善光寺】の文字の中に、五羽の鳩が隠されており「鳩字の額」と呼ばれています。
この額は、史料館で間近に見ることができるので、ぜひ五羽のポッポを見つけてみてください。
善光寺は「西国三十三所巡礼」「坂東三十三所巡礼」「秩父三十四所巡礼」から成る百観音霊場巡りのお礼参りのお寺でもあります。
私、この百観音巡りを結願させるべく、現在は坂東三十三所巡礼の最中。(西国三十三所巡礼は結願しました。秩父は坂東三十三所巡礼結願後に参拝を始める予定。)
ということで、いつになるか分かりませんが、百観音全てお参りし終えた暁には、またこちらの善光寺へお礼参りに来たいと思います。
善光寺境内の入場は無料ですが、それぞれの御堂や山門内に入るためにはチケットが必要。初めての善光寺なので、全て拝観しようと今回は【三堂(本堂内陣・山門・経蔵)・史料館】の共通券1,200円を購入しました。
チケット販売所は、それぞれの御堂横にありますが、共通券を買うなら一番最初の拝観場所となるこの山門で購入するのがいいかと思います。
チケットを購入し、山門内部へ。上に上がるには急な階段を上がっていきます。これ、現存天守などでもお馴染み。昔の建造物の階段はとにかく急。上がって行く人、下りてくる人同じ階段を使用するので、階段下におじさんがいて混雑しないように参拝客の順序を整理してくださっていました。
山門上層部には、文殊菩薩騎獅像・四天王像や四国八十八か所ゆかりの仏像が安置されています。内部の撮影は禁止ですが、門から見える外の景色は撮影OK。
仲見世通りから仁王門、そして遠く長野の山々が一望できます。網がかかっているのがやはりこれまた残念ですが・・・
山門から見た経蔵。
山門から見た本堂。
仏像を拝観し、四国八十八か所の寺名を懐かしみ、上からの景色を360度楽しんで門を下門。(聞いたことない単語。)
本堂
国宝の本堂。642年の創建以来、数度の火災に合っており、現在の建物は1707年の建立。
形が鐘を撞く道具であるT字型の道具・撞木(しゅもく)に似ていることから「撞木造り」と呼ばれています。
お堂に入る前に、お線香をあげます。このでっかいお線香立て(?)香炉(?)の中にお線香を投げ込むスタイルでした。
煙の量も凄いので、浴びたら1日中洋服からお線香の匂いが漂います。匂いが続くを謳い文句にしている柔軟剤も、線香の煙には勝てません。
入口を入ると「撫仏」の別名を持つ「びんずる尊者」がいらっしゃったので、膝とか腰とかお腹とか、自分の弱い所をひたすらナデナデ。最近、うっかりミスが多発しているので、頭もナデナデ。(ちなみに、旅行以外の日常生活では何のミスも起こさないんですけどね。旅先だと注意力散漫になってるんでしょうね、きっと。)
内陣でご本尊(秘仏ゆえ、拝観は不可)に参拝した後、私が大の苦手とするお戒壇巡りへ。
真っ暗な回廊を手探りで歩き、ご本尊の真下にある「極楽の錠前」に触れることで極楽往生のご利益が得られるというもの。
京都の清水寺でも同じように暗闇を歩く「胎内巡り」というものを体験したことあるんですが、これ本当に内部は真っ暗。目を開けていても閉じていても同じです。
私、暗所恐怖症なので「暗さ」は恐怖。それがお化け屋敷ではないありがたい空間であっても、たたの恐怖。
暗すぎて前の人との距離感も分からず、二度ほど前を歩くご夫婦の旦那さんに激突しながら、横の壁を見失わないよう(見えてないけど)しっかり手に触れながらヨチヨチ歩き。
これが思いのほか長いのです(距離は約45mあるそう。)最初、前後を歩く人の声が聞こえていたのですが、後半ほぼ声がしなくなり、物凄く心細くなりながら小股でヨチヨチ。
出口の光が見えた時の安堵感、これこそまさに極楽浄土にたどり着いた気分でした。
そして、手探りで進む際の手の位置が悪かったのか、重要な「極楽の錠前」を触ることができませんでした・・・何のために怖い思いして暗闇に立ち向かったのか・・・
善光寺の御朱印
御朱印所は山門と本堂の間にあります。本堂参拝後10時前に行った時にはそれほど並んでいませんでしたが、1時間後に再び前を通った時にはかなり待ち行列が長くなっていました。
善光寺の御朱印は、それぞれの御堂毎に限定御朱印もあり、数が豊富。
こちらのカラフルな諸堂限定御朱印は書置きタイプ。
他にも左側のような見開きタイプの御朱印もあり。
一番右の一般的な形式のものは直接御朱印帳に記帳していただけます。
私は御朱印帳に記帳してもらい、書置きで山門の御朱印も頂きました。善光寺に限らず、寺院建造物の中で山門が一番好きなので。
経蔵
1759年建立。堂内には、輪蔵(りんぞう)と呼ばれる八角形の書庫があり、その中には仏教経典の全てを網羅した一切経が納められています。
輪蔵には腕木がついていて、これを手で押すと動く仕組みになっています。輪蔵を一周回すことによって一切経を読んだのと同じ功徳が得られると言われています。
功徳を得たく、中に入って輪蔵を押してみる。
・・・びくともしねぇ。
1ミリたりとも動かぬ輪蔵を前に途方に暮れていると、ご夫婦と思しき中年の男女お二人登場。お二人が押すのに便乗して、何とか一周輪蔵を回すことができました。
(初動が大変なだけで、一度動き始めたら反動で結構すんなり回りました。)
日本忠霊殿(善光寺史料館)
戊辰戦争から第二次世界大戦までの戦争で亡くなられた方を供養するための御堂。
建物内には、史料館が併設されていて、善光寺絵馬や本堂に安置されていた仏像などを拝観することができます。
大勧請
善光寺自体は、現在無宗派の寺院ですが、現在は天台宗・浄土宗によって護持運営されています。
そのうち天台宗派を束ねているのがこちらの大勧請で、こちらの住職さんが善光寺の住職も兼ねているそうです。
門前町で腹ごなし
三堂と史料館、全てまわって大体2時間ほどでした。
9時過ぎに来たので、まだ午前中。ちゃんとしたランチを食べるほどお腹は空いていないけど、何か食べたい。その「何か」を求めてお店が並ぶ門前町へ。(そして、結局これらがランチ代わりとなる。)
まずは長野と言えばリンゴ!リンゴと言えばアップルパイ!(他にもあるやろ)
『信州りんご菓子工房 BENI-BENI』の塩キャラメルアップルパイ。
上部にかかった塩キャラメルソースが、甘さの中にしょっぱさを生み出します。
お店の外のベンチで食べていたんですが、パイ系スイーツは美味しいけど食べにくいと相場が決まっています。ポロポロとパイくずを算出するわ、上のソースが暑さでだんだん溶けてくるわ、で少々難儀しましたが、美味しく完食。
甘いもの食べたら、しょっぱいものが食べたくなりました。という訳で、続いては長野名物のおやき。
『いろは堂』の野沢菜おやき。具材も長野っぽいもの選んでみました。
おやきって、何で全国的に広がらないんですかね。具材も色んな種類があって、パッとお手軽に食べられるから、冬の肉まんみたいにコンビニとかに展開すればいいのに。
(ちなみに、長野のデイリーマートにおやき売っていたので買ってみましたが、皮が肉まんの皮を平べっちゃくした感じで硬く、専門店とは全然違う味で正直いまいちでした・・・やはりこの皮を美味しく焼こうとすると、大量生産でお安くするのは難しいのかしら・・・)
利用案内
拝観料・開館時間・閉館時間それぞれ御堂毎に異なるので、詳細は下記をご確認ください。
おまけ
善光寺をまわったあと、長野県立美術館へ。
本館と東山魁夷館からなる美術館。東山魁夷の作品が見たくて入館。
コレクション展チケット(本館NAMコレクション・東山魁夷館コレクション 共通)は700円でした。(企画展は展覧会によって異なります。)
東山魁夷の代表作の一つ『緑響く』を見ることができました。この絵画の舞台となった御射鹿池にもいずれ行きたいものです。(行きたいところ、旅に出る度(しゃれ?)、減るどころか増えるバイバイン現象。)